AI翻訳のチェック依頼が増加中?翻訳会社が伝えたい注意点 | インフォトランス株式会社

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AI翻訳のチェック依頼が増加中?翻訳会社が伝えたい注意点

コラム

「AI翻訳したのでチェックして」というご依頼について

Google翻訳やDeepL翻訳など、ブラウザ上で誰でも無料で使えるAI翻訳ツール。数年前まで「ビジネスでは使えない」と言われていましたが、近年は精度が飛躍的に向上し、実務での活用も現実的になってきました。

誰でも簡単に使えることから、最近増えているのが「AI翻訳したのでチェックしてほしい」というご依頼です。お客様としては、ご自身で翻訳された分、コストを抑えられるとお考えのようですが、実は翻訳会社にとっては対応の難しい案件となることがあります。

 

翻訳会社が確認したい2つのポイント

  1. 求められる品質レベルは?
  2. どのAI翻訳ツールを使用したか?

ポストエディット(PE)とは?

AIが生成した翻訳文を専門家が校正・修正する作業を、業界では「ポストエディット(Post-Editing: PE)」と呼びます。

翻訳者の作業は、原文を確認し、AI生成テキストと照合して修正を加えるというもの。これを全文に対して行うため、実は一から翻訳する作業とほぼ同じ工数がかかるのが実情です。翻訳者の中には「全文チェックするなら、最初から翻訳させてほしい」とPE作業を敬遠する方もいらっしゃいます。

 

2つの編集レベル

ポストエディットには、求められる品質に応じて2つのレベルがあります。

編集レベル 内容
ライトPE
(簡易後編集)
短時間・低コストで、基本的な意味の伝達と重大な誤訳の修正を目的とする。内部文書や参考資料など、完璧な文章でなくても内容が理解できればよい場合に適している。
フルPE
(完全後編集)
ネイティブによる翻訳と同等の品質を目指し、自然な流暢さや文化的適応、用語統一など徹底した修正を行う。対外文書やマーケティング資料など、高品質が求められる場合に必要。

「AI翻訳をチェックしてほしい」というご依頼では、どちらのレベルを求めているのかが、ご依頼の担当者も不明確なケースが多く、これが翻訳会社を悩ませる第一の理由です。求められる品質レベルによって、担当する翻訳者の選定や作業時間、コストが大きく変わってくるためです。

 

使用したAI翻訳ツールの情報が重要な理由

Google翻訳、DeepL翻訳など、各ツールにはそれぞれ特有の翻訳傾向や「クセ」があります。チェックを行う翻訳者にとって、どのツールで生成されたテキストかを事前に知ることは、効率的で正確なチェックのために重要な情報となります。

また、無料版と有料版(プロ版)では、セキュリティ面だけでなく、翻訳品質にも差が出る傾向があります。有料版では用語集の登録や文脈の学習機能などが利用でき、より精度の高い翻訳が可能になるためです。

 

コストと品質を両立するために

「AI翻訳したのでチェックしてほしい」というご依頼の場合、実は原文のみをご提供いただき、翻訳会社側で「AI翻訳+ポストエディット」を一貫して行う方が、QCD(品質・コスト・納期)の観点でより良い成果物をお届けできるケースが多くあります。

理由は以下の通りです:

  • 翻訳会社が契約するプロ版AI翻訳ツールを使用できる
  • 案件に応じた最適な翻訳エンジンを選択できる
  • 用語集や過去の翻訳資産を活用し、一貫性のある翻訳が可能
  • 一貫したワークフローで、効率的かつ高品質な作業ができる

今後の展望とインフォトランスの取り組み

AI翻訳の精度は、ここ数年で目覚ましい進化を遂げています。特定の用途では、すでに実用レベルに達していると言えるでしょう。

ただし、現時点では「そのまま使う」には注意が必要です。文脈の誤解釈、専門用語の誤訳、文化的ニュアンスの欠落など、人間の目によるチェックが不可欠な場面はまだ多く存在します。

翻訳会社の役割は、AI技術を適切に活用しながら、最終的な品質を保証することにあります。インフォトランスでは現在、独自に開発した「AIフィルタリング(AI品質評価ツール)」を導入し、生成された翻訳文を自動で分析。人手による確認が必要な文章と不要な文章を自動で振り分ける技術を実現しています。

これにより、従来は全文に対して行っていたポストエディット作業を、必要箇所のみに絞って実施できるようになり、品質を維持しながら作業効率の大幅な向上を可能にしました。

AI翻訳の効果的な活用方法や、品質とコストの最適化についてのご相談も承っております。お気軽にお問い合わせください。

 

📅 公開日:2025年10月23日
✍️ 執筆:インフォトランス株式会社 AI翻訳ソリューションチーム
🏢 監修:翻訳プロジェクトマネージャー(翻訳歴15年)